思い立ったが吉日


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ファーストキス×2


「ふむ、文彰(ふみあき)はこういうところが好きなのか」

 姫青(きはる)は公園の木陰を渡る風を全身に受けながら、両手を広げて深呼吸をした。頭の上には髪の色と同じ黒い耳。周りの音を拾っているようで、ひっきりなしに左右に動いている。

「あの……さ、手を繋いでも、いい?」

 文彰は自分の声がうわずっているのを自覚しつつ、ようやくそう告げることができた。

「いいぞ。許そう」

 高飛車な姫青のその言い方に文彰は苦笑しつつ、小さくて柔らかな手を手に取った。

「文彰の手は、温かいな」

 手を繋ぎ、特に目的があるわけではなく、気の向くままに公園内を散策する。

「文彰、教えてほしいことがあるのじゃが」
「わかることなら、なんでも」
「キス、ってなんじゃ?」

 思いもかけない質問と単語に、文彰は全身が熱くなった。

「上総に聞いたらわからないと言うし、睦貴はにやにや笑うだけで教えてくれないのじゃっ」

 不服そうな表情の姫青に、笑みを浮かべる。

「なあ、文彰。そのキスとやらを教えてくれないか」

 繋いだ手を強く握りしめられ、大きな黒目で上目遣いに見られて、しかもキスを教えてほしいと言われ、多感な男子中学生としては、暴走しても仕方がないだろう。

「キスを教えてあげるから、目を閉じて」

 ずるいと思いながらもこれはチャンスと思ってしまうあたり、文彰は意外にしたたかかもしれない。
 姫青が素直に目を閉じたのを確認して、文彰は二度ほど深呼吸をした。
 姫青の、さくらんぼのようなぷるんとした唇に、そっと自分の唇を重ね……ようとして、初めての出来事に距離感がつかめず、ぶつけるような乱暴なキスになってしまった。
 その衝撃に驚いた姫青は目を見開くと、瞳を閉じた文彰がドアップ。姫青は慌てて文彰から離れる。

「だっ、大丈夫か、文彰?」

 なにかの拍子にぶつかったとでも思われたのか、姫青は慌てて文彰の顔に手を繋いでない反対の手で触れてくる。その手のぬくもりと、先ほどした自分の行為に文彰の頬に熱が宿った。

「姫青、ごめん。俺、初めてだから……その、感覚がわからなくて」

 歯が当たらなくてよかったと内心で安堵しつつ、それでも思っていた以上に柔らかな唇の感触を思い出し、さらに頬が熱くなる。

「わらわは大丈夫じゃ。文彰は顔が赤いが、痛かったのか?」
「違うよ。今のが姫青が知りたがっていたキス、だよ」

 文彰の言葉に、今度は姫青が真っ赤になる番だった。

「キッ、キスとは、口づけのことだったのか!」

【おわり】


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