《六話》初デートは邪魔がいっぱい!?01

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『肉じゃが』

 肉じゃがの発祥は諸説あるが、戦後に広まった日本料理のひとつである……らしい。

 ビーフシチューが元であっただとか言われているが、現在は牛肉あるいは豚肉にジャガイモ、玉ねぎ、人参、こんにゃくなどを入れてしょうゆ、砂糖などで甘く煮たものを「肉じゃが」と言う。
 家庭ごとに味が違い、さらに「彼女に作ってほしい料理ナンバー1」と言っても過言ではない……はずだ。

 彼氏の心をぐっと掴んで離したくないのなら、やはり料理ができないと駄目、ということですね!

 ……あたしの場合は圭季さんの方が料理が上手であたしの方が惚れてる……ってなにを言わせるのよっ!?

全五話。文字数多めです。




 お風呂に入り、英語の予習をするなんてことを忘れて、今日買ってきた雑誌を取り出してベッドにごろごろとしながらぱらぱらめくっていた。こういう雑誌のモデルさん、みんなほっそくてかわいいのよねぇ。少しぽっちゃり目のあたしが着たら似合わないだろうと思われる服を着てカメラに向かってにこにこしているモデルさんたちを見ていたら、なんだかもう、切ない気分になってきた。ダイエット、とは言わないけど、ももう少し細くなった方がいいのかなぁ。
 雑誌を閉じて、起き上がって明日の服を決めるためにクローゼットを開け、そこについている鏡を覗き込む。朝、あんなにひどかったクマは朱里に教えてもらったマッサージの効果もあったのか、ずいぶんと分からないレベルにまではなっていた。
 だけどさ。根本の部分がなぁ。
 鏡を見て、自分の錆色の髪をつまんでみる。母親譲りのチョコレートのような色の髪。小さい頃からこの髪の色のことでずいぶんと言われ続けた。

『チョコ色の髪なんてありえない』
『染めてるんだろう、おまえ?』
『気持ち悪い~』

 父は今ではずいぶんと白髪交じりとはいえ、黒髪だ。写真の中の母は、やっぱりあたしと同じ髪の色をしていた。
 父は髪の色でいじめられて泣いていると事あるごとに、

『チョコ、ボクは母さんのあのチョコレートのようなきれいな髪に惚れたんだよ。もちろん、見た目だけではなくて中身も大好きだ』

 そう言って細い目をますます細めて目が溶けてしまうのではないか、と思われるくらいとろりととろけるような笑顔でいつも母のことを話してくれた。ああ、父は本当に母のことを愛しているのだな、と思ってその父の顔を見るのが大好きだった。
 そういえば、最近はあの笑顔を見ていないな。と思ったら、中学に入ってからは髪の色のことをあまり言われた覚えがないことに気がついた。
 あたしの通っている聖マドレーヌ女学院……改め、聖マドレーヌ学院は私学ということで良家の子女が通う学校である。そして、聖マドレーヌという名を冠している割に、これが面白いことにカトリック系の学校ではない。聖~と名前がついていたらミッション系だと思われがちだけど、由来は別にあるらしい。そんな話を中学に入学した時に言われた気がするけど、つまらなくて聞いていなかったから分からない。
 そして、私学なら校則が厳しい、と思われがちだけど、確かに変な校則も存在することはするけど……思っているよりも自由で、この髪の毛に関しても先生から一度として注意を受けたことがない。ませている子は中学入学と同時にすでに染めたり化粧をしてきたりという子もいるにはいるけど、基本的にはみんな、真面目な子、なのである。染めるなんてもってのほか、化粧なんかもしている子の方が珍しい。朱里は母親の影響もあって結構早くから化粧をしている派手な子ではあったけど、見た目の派手さからは相反して、真面目な子。
 もちろん、突然恋に落ちて突撃告白して玉砕することも多いけど、思いが叶ったらかなり一途。だけどあまりにもとんでもないことをしでかしてくれるので、向こうからすぐに別れを告げられるみたい。朱里、かわいいのにあの性格がねぇ……。
 そういえば圭季さん、この髪の色、褒めてくれたよね。細くてふわふわの髪の毛を再度つまみ、服を決めようとしたその時。
 こんこん、と扉が遠慮がちに叩かれた。

「はい?」

 那津かな、と思ったけど返事をして扉に向かって開けた。そこには、意外にも圭季さんが立っていた。
「まだ起きていてよかった」
 圭季さんは安堵した表情で見ている。先ほど見たなんとも言えない表情を思い出して少し居心地が悪くなる。

「明日だけど、家を九時半くらいにでようかと思って。起こすのはいつも通りでよいよね?」

 出発時間だとか全然決めていなかったことに気がつき、考える。いつも通りの時間だと早いような気がしたけど、なんならお菓子の下準備だけでもして出かけるのもいいかな、と思い直してはい、と返事をする。
 返事を聞いた圭季さんはにっこり微笑んでそのまま部屋の目の前にある脱衣所に向かって行った。今からお風呂に入るのか。
 扉を閉めて、明日着て行く服を考えることにした。
 圭季さんがどんな服を着て行くのか分からないけど、年上の働いている男の人だから……。
 今日買った雑誌をぱらぱらとめくり、参考にしてみる。高校生らしいけど年上の人と一緒にいても恥ずかしくないような服、かぁ。普段からおしゃれなんて気にしないからあまり洋服を持ってないんだよねぇ。困ったなぁ。やっぱりスカートかなぁ。ブラウスにカーディガンにこのあたりのスカート……? 選択肢がなさすぎる。
 早く寝よう、と思っていたのに結局なかなか決めることができなくて思ったより遅くなってしまった。うぅ、またクマ牧場が……。




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