《十話》那津の妹、登場!01

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 そうして迎えた中間試験。それなりに真面目に勉強はしたから、そこそこの成績のはず。
 那津はさすがに同じ教室で試験を受けることができないからと本来の教室で試験を受けていたみたい。
 試験も無事に終わり、返ってきた答案用紙を見て、まあまあの結果にほっとした。そして、全部返ってきて、上位成績優秀者が貼り出され、それを見て驚いた。
 なんと、那津が一年のトップだったのだ。
 あたしの横にずっといて、授業なんて受けてないはずなのにっ! なんで?

「頭のできの差、だね」

 なんて憎まれ口を叩いていたけど、これにはぐうの音も出ない、というのがぴったりだった。
 ようやくあたしも試験が終わってほっとしたのもあり、お菓子作りを再開。那津がよく邪魔をしてくれるけど、華麗にスルーするすべも覚えた。那津とじゃれているとたまに鋭い視線を感じるのでふと見ると、圭季さんがじっと見ていることがあったけど、なにかあたし、悪いことやってる? だけどそう聞けなくて、ちょっともやもや。
 土曜日。朝ご飯を食べた後、いつものように買いだし。圭季さんと那津のふたりが荷物を持ってくれていて、その後ろをあたしがいつものようについてマンションに帰る。
 そうして。マンションの前にいつぞやのようにだれかが立っていた。だけど……薫子さんではなかった。
 パーマをかけているのか、といった感じのふわふわの長い黒髪、きらきらと輝く黒茶色の瞳。身長はあたしより高くて手足が長いけど、ほっそりしていてモデルさんみたいな体型。ピンクのひざ上のフレアスカートに白の半そでブラウス。ものすごくかわいい女の子が、そこにいた。

「け、圭季。オレ、急用を思い出したよ。に、荷物、たのむ、な?」

 那津はそういうなり、圭季さんに荷物を押しつけ、くるりと回れ右、をして走り出した。マンションの前に立っていた可憐、という言葉がぴったりな少女は那津を見つけてぱーっと顔を明るくして、

「おにーさまぁあああ~!」

 と叫んで走り始めた。

「オレはおまえなど知らないぞ!」

 那津の叫び声が少し遠くで聞こえる。少女は勢いよくあたしたちの横を通り過ぎ、逃げ去る那津を追いかけている。

「あ、あの……。今の人……?」
「あ、ああ。那津の……妹」

 はい? 那津の妹?? 全然似てないんだけど。

「あれはどう見ても、那津の負け、だな」

 しばらく待っていると、遠くから那津の叫び声と思われるものが聞こえてきた。

「つかまったな。あの子に走ることで勝てるわけがないだろう……」

 圭季さんの呆れたような声に、きょとんと見上げる。

「那津の妹の梨奈りなは、陸上の選手なんだよ」

 そ、そうですか。

「ケーキ、助けてぇ~」

 那津は妹だという梨奈ちゃんに首根っこをつかまれて戻ってきた。

「ワタシから逃げようとするからですっ!」
「梨奈ちゃん、久しぶりだね」

 どうやら圭季さんは顔見知りらしく、そう挨拶している。

「圭季さん、いらしたんですか」

 ものすごいつっけんどんな態度にびっくりした。こう言ったらなんだけど、圭季さんはあちこちで女の人に人気があるから、一緒に買い物に行ってこっちがやきもち焼くことがあるのに、この態度は初めてで新鮮。
 苦笑したような複雑な表情に梨奈ちゃんは不機嫌な顔で、

「ワタシの大切なお兄ちゃんを取らないでくださいっ!」

 そういって那津をぎゅーっと抱きしめている。
 えーっと……。ブ、ブラコン?

「り、梨奈っ! 苦しいから離せっ!」

 那津が梨奈ちゃんの腕の中で暴れているのをみて、なんだか意外。常に冷静で何事にも動じないと思っていたけど、あたしはどうやら那津を誤解していたらしい。

「あ、あなたがお兄ちゃんが守ってるという人なんですねっ!」

 少し敵対心を燃やした瞳で半ば睨まれるようにこちらを見てきた。

「ワタシ、楓梨奈。那津の妹でーっす」

 といきなり明るく自己紹介されてしまった。あたしは名乗り、頭を下げるしかなかった。

「梨奈ちゃん、とりあえずチョコの家に行こうか」
「圭季っ! 猛獣を家にあげるなっ! マンションを破壊されるぞ!」

 猛獣? 破壊??
 壊されるのは困るけど、この子がそんなことをするように見えないし、ここで立ち話する方がどうかと思ったから、とりあえず中に入ることにした。

「チョコちゃんの、鬼っ! 悪魔っ!」

 中に入ることを許可したあたしに向かって那津はそう言っていたけど、梨奈ちゃんがにっこり微笑んで那津の耳元になにかを囁いていた。それを聞いた那津は……驚くほど静かになった。どんな魔法の言葉を言ったのだろう?





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