《十二話》クリスマスパーティー01

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 秋の行事も終わり、中間試験、期末試験と怒涛のように押し寄せ、どうにか無事……かどうかはともかく、乗りきった。
 那津は相変わらず、教室ではあたしにべったりで執事をやっているし、クラスの子たちも慣れっこで、いるのが当たり前、になってるけど、改めて考えると、やっぱりおかしな状況よね。
 そして、文化祭が終わってから、立花センセはぱったり、あたしのことを呼ばなくなった。その代わり、薫子さんが頻繁に家庭科準備室を出入りしている姿を見かけるようになった。それならそれで、全然構わないんだけど。なんとなく釈然としないのは、どうしてなんだろう。
 家庭科の授業はなぜか助手として薫子さんがついてる。英語の授業はどうしたの? それはやはり、他の生徒も思っているらしく、たまにひそひそと話している声が聞こえたりする。
 そして、家庭科の授業はそれまではそこそこ楽しかったのに、薫子さんが助手になってからつまらなくなった。気のせいか、立花センセも元気がない。これに関しては、ファンクラブのみなさまがやはり黙っていなくて、たまたま家庭科室の前を通った時、激しく言い合っている声が聞こえて来て、それも何度も言い争っているらしいことを知った。

「これなら、まだあのチョコレート頭が助手をしていた方がよっぽどましじゃない!」

 と本人が預かり知らないところで、あたしのことを引き合いに出してる。いえ、あたし、助手からはずされたことで安心していたんですが。

「あらぁ、あなたたち、わたしに妬いてるの?」

 あー、もうっ! 聞いてらんない。
 立ち聞き状態だったので、急いで教室に戻る。なんと申しますか、おモテになる人は大変でございますわね。
 席に戻ると、那津は那津でクラスの子たちに囲まれていた。だけど、あたしが席に着くと、さーっと浜辺の潮が引くように、いなくなった。いつも思うけど、なんで?
 二学期も終業式を終え、これからは一大イベント? のクリスマス!
 え? 圭季、実家に帰っちゃう……の?
 クリスマスケーキを作って、と思っていたのに。

「チョコ、そんなに泣きそうな顔をするなよ」

 圭季の服の端を持って、思わず涙目で見上げる。

「まだ続きがあるんだけど」

 続き?

「橘製菓は毎年、社員を招いてクリスマスパーティーをしてるんだよ」

 クリスマス……パーティー?

「毎年、雅史さんも誘ってるんだけど、亡くなった奥さんを思い出してつらいから、と断わられ続けてたんだけど、今年はチョコは来てくれるよな?」

 ?
 ??
 頭の中にはクエスチョンマークしか浮かばない。

「チョコは覚えてないかもしれないけど、おれたち一度、そのパーティーで会ってるんだよ」

 ……はいっ? それっていつの話っ!?

「十年以上前の話」

 ………………はいっ?

「覚えてないのも無理ないよな。チョコは三歳だったから」

 三歳? 三歳の記憶なんて、ほとんどありませんよ。
 だけど。
 三歳、クリスマス……。そのふたつのキーワードがなにかを訴えている。頭の片隅でなにかがツンツンと主張している。なんだろう?
 うーん、と頭をひねって思い出そうとしたところに、

「チョコちゃん、クッキーちょうだいっ!」

 と能天気な声がして、思考が途切れた。
 もうっ! と思いつつも、那津にクッキーの入った袋を手渡す。

「今日のはこれだけよっ!」
「えー、チョコちゃんのケチっ!」

 ケチ、じゃないわよっ! お菓子の材料代がどれだけ食費に食い込んでいるのか知っているのかっ!?

「パーティー当日、那津を迎えに来させるから、準備しておいてな」

 といきなり言われてもっ! 服なんてどうすればっ!

「お、お父さんっ!」

 困った時の父頼み? 父の部屋に行くと、すでにグーグーと寝ていた。
 ……お邪魔いたしました。
 あとは……朱里を頼るしかないか。えーっと……朱里さまぁ~!
 ケータイ電話を取り出し(一応、持ってるのよ……。あまり必要性はないんだけどねっ!)、朱里にメールをする。

『父親の会社のクリスマスパーティーに行かなくてはならなくなったんだけど、ドレスとかどうすればいいんだろうっ!?』

 そんなに待たないで、朱里から返事がきた。

『明日、買いに行くの付き合ってあげるから、朝十時に駅で待ち合わせね』
『ありがっと~!』

 ということで、いきなり明日の予定が入ってしまった。ドレス代を父にもらわなくては。






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