《十三話》家族の一員01

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 あたしは今、圭季のおうちにお泊りに行くための荷造りをしている。
 お、お泊りだって! うひひひ。
 なんてあやしい笑いをついこぼしてしまうけど、父も一緒、なのよね。
 だけど、それでもうれしくて仕方がない。
 結局、クリスマスパーティーは嫌な感じのまま圭季と別れてしまったものの、昨日、電話があって、明日、那津が迎えに行くから泊まる準備をしておいて、と言われたのだ。電話越しだったけど久しぶりに圭季の声が聞けて、ちょっとテンションが高めなあたし。
 あらやだ、なんだか恋する乙女みたいじゃない。あは。

「チョコ……。ひとりで部屋の中で百面相してないで」

 様子を見に来た父ににやにやしているのを目撃され、恥ずかしい。準備はできたか、と様子を見に来たらしい。まだに決まってるじゃないっ!

「チョコはなに着てもかわいいから、適当に洋服を決めて早く詰めて」

 と言われてもっ!
 だけどまぁ……いまさら、なんだよねぇ。圭季にはかなりひどい恰好を見せてるし。タオル一枚事件、よりははるかにましか。
 そういえば、そんな事件もあったよなぁ、とついつい遠い目になって思い出に浸ってしまう。

「ボクはもう準備できたから、玄関のところに荷物を置いておくよ」
「はーい」

 そうして、おやすみ、と言って父は去って行った。時計を見ると、日付が変わりそうな時間だということに気がつき、あわてる。またクマができて、圭季に心配をかけるじゃないの。

『おれがいないと眠れないなんて、チョコも子どもだな』

 とか言って、頭をつん、とつつかれちゃったりして。でへへ。
 ……あたし、どこまで妄想族なんだ。
 あああ、妄想は後回しにして、服を決めなきゃ。
 クローゼットを全開にして、洋服を漁る。かわいい服……と。
 ない。
 今度、父にお小遣いをもらって、買いに行こう。朱里にまた、連れて行ってもらおう。
 とりあえず、まともそうな服を選んで、かばんに詰め込む。宿題は……いいや。帰って来てからやる!
 詰め込んだ荷物を玄関に持って行き、父のかばんの横に置いておく。
 この広い家に、父とあたしふたり。来年のお正月はどうやって過ごしているのかな。
 そんなことを考えながら、布団にもぐった。

。.。:+* ゜ ゜゜ *+:。.。:+* ゜ ゜゜ *+

 目の前に、大きな目をした男の子が立っている。パッと見、女の子に見えなくもないさらさらの少し長めの髪。だけど、生意気にも子ども用のスーツを着ている。小さな蝶ネクタイがかわいらしい。
 ああ……これは。たぶん、あたしが三歳の時のあのクリスマスパーティーの記憶だ。

『チョコ、けーきのこと、すきっ』

 そういって、あたしは目の前にいる八歳の圭季の頬にキスをするのだ。
 って、キスしたの、あたしっ!? どこまで大胆なの、三歳のあたしっ!
 目の前の八歳の圭季は真っ赤になっている。だけどものすごく笑顔なのは、たぶんあたしがにこにこしているから。

『おれもチョコのこと、好きだよ』

 圭季の言葉に三歳のあたし、さらににっこりと笑っている。

『あら、かわいらしいカップルですこと』
『あのね、チョコは将来、けーきのお嫁さんになるのっ!』

 をいをい、三歳のあたし。そこまで言っていたのかいっ!

『あらぁ、チョコちゃん、うちの圭季のこと、そんなに気にいってくれたのね』
『うん。けーきね、いっぱい遊んでくれたのっ』

 話をしているのは、圭季のお母さまらしい。あまり記憶にないけど、黒髪と鮮やかな着物の柄だけものすごく覚えている。

『いいわ、チョコちゃん。チョコちゃんが十八になって、高校を卒業して、その時になってもまだ圭季のことが好きなら、圭季と結婚してくれる?』
『うん、いいよ』

 三歳のあたしー! 意味が分かって返事をしているのかっ!?

『圭季は? いい?』
『おれ? おれは……チョコを一生、守るから』

 うわっ。ま、待って。八歳の圭季。なんであなたは八歳にして、そんなセリフを吐きますかっ!

『雅史さん、千佳子ちかこさん、おれ、チョコのこと、一生守るからっ!』

 父と母がにこにこ笑っているのが見える。ああ、すごく幸せいっぱいだったのに。






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