《二十八章》「従姉の結婚」

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 2つ年上の従姉の香枝(かえ)が結婚すると聞き、奈津美は驚いた。奈津美よりも仕事の鬼として有名だった。
『なっちゃん、男なんて裏切るから。仕事は、やったらやっただけ自分に返ってくるんだよ、仕事はいいよー』
 そう言って少し切なそうに笑っていた香枝。いい人に出会ったのかなぁ……とぼんやり考えていた。
 日曜日、香枝の結婚式に行った。
「香枝ちゃん、おめでとう!」
 奈津美は香枝の控室に行った。純白のウェディングドレスが眩しかった。
「なっちゃん! ありがとう! あなた、なんだかきれいになったみたい。今、好きな人がいるんでしょう?」
「あ、うん……」
 香枝にそう言われ、かなり照れくさかった。
「うんうん。よかった。あたしね、すごい後悔してたの」
「え?」
「仕事はいいわよって言ってから、なっちゃん、ものすごい仕事に打ち込むようになったから。すごい後悔して、反省してたの」
「なんで?」
 奈津美は不思議に思った。
「あのときあたし、好きだった人に振られて……それもね、すごい裏切りにあって……なっちゃんにはあんな気持ちさせたくなくて……。あは、結婚式の前に話す内容じゃなかったわね、ごめんね」
「香枝ちゃん……」
「だんなになる人に会って、救われたの。あたしね、すごく今、幸せなの」
 香枝は奈津美に近くに来るように合図された。
「?」
「実はね今、三か月なの」
「え!?」
 奈津美はびっくりした。
「結婚しようって言われて、それと同時に妊娠に気がついてね」
「お、おめでとう!」
 奈津美はびっくりしたけど、素直に喜べた。
「なっちゃん、心の相性も大切だけど、身体の相性も大切よ?」
「!」
 いたずらな笑みを浮かべた香枝を見て、奈津美は勇気をもらったような気がした。
「結婚してから初めてで、身体の相性が合わないのは、苦痛よ」
 香枝の言葉に、奈津美は真っ赤になるのがわかった。
「お幸せに!」
 奈津美は真っ赤になりつつ、香枝の部屋を出た。香枝に背中を押されたのはわかったけど……。やっぱり……怖い。

   *   *

 香枝の幸せそうな顔と、やさしそうなだんなさんの顔を見て、結婚は女の幸せなのかなぁ、とぼんやりと奈津美は考えていた。
「健やかな時も病める時も、喜びの時も、悲しみの時も……」
 私はあそこに立つことができるのかな?そして……隣に立っているのは、だれなんだろう。教会の中で誓いの言葉をぼんやりと聞きながら、奈津美は思った。
 隣に立っているのが……蓮だったらいいな……なんて。奈津美は想像して、真っ赤になっていた。
 あー、やだやだ。人の結婚式で自分のこと考えて真っ赤になるなんて、恥ずかしい。次の日、出勤して蓮の顔を見て、赤面してしまったのは……仕方がないってことにしよう。
「先輩?」
 仕事の時は今まで通り「先輩」で通している蓮。
「あ、いや。昨日、従姉の結婚式にいって」
「あ、オレたちのこと、想像した?」
「ちょ!」
 奈津美は真っ赤になって否定しようとした。
「オレはいつでもいいよ、先輩?」
 蓮の言葉に、奈津美はますます赤くなる。
「うっ、と、とにかく蓮、仕事!」
「はいはい」
 にやにやした顔の蓮を見て、奈津美はため息をついた。
 蓮との関係は……特に進展がなく、自分でもどうしていいのか分からなくて。
 そして季節はどんどん寒くなり、クリスマス間近に。
 奈津美は蓮にクリスマスプレゼントをと思っていろいろ調べたけど、なーんか決め手に欠ける。


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