《四十五章》「白いバラのドレス」

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「オレ、レミさんにお礼の電話入れておく」
「よろしく」
 蓮は受話器を取り、名刺片手に電話をかけている。奈津美はデザイン画を丁寧に見ていた。
 電話がなかなか繋がらないらしく、再度かけ直していた。
 とそこへ、奈津美の内線がなった。
「はい、小林です」
『佳山さんはお電話中ですか?』
 電話は一階の受付かららしかった。
「今、電話してます」
『あの、アポなしですが、冬川レミさまがいらっしゃってますが』
 奈津美は目で蓮に合図して、
「分かりました。お通ししていただけますか」
 蓮は受話器を置いて、奈津美を見た。
「ホテル事業部までご案内お願いできますか? はい」
 奈津美は礼をいい、電話を切った。
「レミさん、今から来るって」
「は?」
「今、下にいるみたいなの」
 蓮はそれを聞いて、空きの打ち合わせ室を確認しに行った。
「こんな日に限って、空いてない」
 蓮はしょんぼりと帰ってきた。
「困ったわね」
「ここでいいか」
 今日はフロア内はほとんどの人が出払っている。
「オレ、お茶入れてくる」
 蓮と入れ替わりでレミが案内されてきた。
「こんにちは。わざわざすみません」
「こちらこそごめんなさい。連絡なく突然来てしまって」
 奈津美は空いている椅子を持ってきて、レミにすすめた。今日のレミの服は、落ち着いたブラウンのアンサンブルだった。
「打ち合わせ室が今日は珍しく全部埋まっているみたいで、ここですみません」
「いえ、お気になさらず」
 レミはにこりと笑ってくれた。
 そこに、お茶を入れ、トレイを持った蓮が帰ってきた。
「レミさん、お忙しいところわざわざすみません」
「こんにちは」
 レミは立ち上がり、あいさつをした。
「こんなところですみません」
 蓮の言葉に、レミは笑った。
「ふたりして同じことを言うのね」
「まあ……ほんとに申し訳なく……」
 三人は蓮の入れた紅茶を飲んで、少し世間話をして、
「今日、来たのはね」
 レミは書類ケースからなにか取りだし、
「朝、急にデザインを思いついて」
 渡されたデザイン画を見て、奈津美はため息をついた。
「……すてき」
 蓮も奈津美の手元をのぞきこんだ。
 肩口は広く開いており、袖は長く袖口が広くなっていて袖口はやわらかくギャザーで華やかに。スカートは床に届くほどの長さで何重にも生地が重ねられ、やはり裾は袖口と同じようにギャザーが寄せられていた。ベールもついていて、肩口くらいの長さだったが、パールがちりばめられ、三重になっていた。
「白いバラをイメージしてみたの」
「私、これがいい」
 奈津美は一目で気に入った。
「うん、似合いそうだ」
「レミさん、ありがとうございます」
 奈津美はうれしくて、デザイン画を抱きしめた。
 残りのデザイン画の話もレミにしてみた。
「ええ、使ってもらえるのなら、すごくうれしいわ。あの生地はものすごくアイデアが浮かんできて、困ったわ」
 レミはそう言って笑っていた。具体的な金額交渉はまた改めてとなり、レミは帰っていった。
「すてき……」
 奈津美は先ほど渡されたデザイン画を見て、うっとりしていた。
「しかし、そのデザインだと、あの生地だとかなり重そうだぞ」
「うん、それは気になった」
 そのあたりの調整も必要だし、またあそこの織物工場の社長にも相談しなくてはならない。
「かなり忙しいね」
「うん」
 やることは山積みだった。


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