《四十八章》「ブライダル課」

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 片付けをして、残務処理をして、ようやく落ち着いてきた頃。
 奈津美は熱で倒れた。
「あーあ。せっかく休み取って新婚旅行に行こうと思っていたのに」
「働きすぎ」
 蓮は休みを取って看病している。
「いつかの時と逆だ」
「そうだね」
 蓮は思い出したのか、笑った。
「ゆっくり休め。横にいるから」
「いいよ」
「最近、一緒にゆっくりいられなかったから、いいの」
 蓮は奈津美の髪をなでた。
「今度こそ結婚式しよう」
「あはは、なんか本来の目的が変わったからね、あのショー」
 ショーは大成功で、試作ドレスはオークションで競り落としとなったのだが、どのドレスもとんでもない値段がつけられた。特に高かったのが美歌の着たマーメイドラインのドレスだった。
「モデルが良かったからかな?」
「そうかもな。一番良かった」
 なんとなく蓮の言葉に奈津美は小さく嫉妬したけど、美歌に免じて許してみた。
 後から知ったのが、あのふたり、結婚式はしてなかったらしい。予定はしていたけど結局、貴史が精神的に壊れて取り止めにしたらしい。その後すぐに美歌は妊娠が分かり、自分の過ちに気がつき、貴史と関係を修復したらしい。
「無粋な疑問だけど、あの子はふたりの子なのかな?」
「明らかにそうだろう。どう見てもあの子は山本に似ていたぞ」
 奈津美は思い出そうとしたけど、やめておいた。
「今度、しっかり見よ」
「その山本だが、来月から復帰するらしいぞ」
「そうなんだ」
 なんとなく自分の周りになぜか自分を思ってくれている男ばかりで、
「なんかさ、気がついたら私、逆ハーレム状態じゃない?」
「……そうだな」
 奈津美の言葉に蓮は苦笑した。
「あー。毎日奈津美にやきもきしないといけないのか……」
「そんな必要、ないよ。だって私、蓮が一番だもん」
「ほんとか? じゃあ、早く熱治せ。子ども作ろうぜ」
 奈津美は真っ赤になった。
「なっ!? なに、その直球勝負っ!」
「赤ちゃん、かわいかった……」
 蓮はうっとり美歌と貴史の赤ん坊を思い出しているようだった。
「意外だ。蓮は要らない派だと思ってた」
「うん。オレもそう思ってたよ」
 いつだってゴムを欠かすことなくなにかの儀式のようにつけていたから、要らないんだと思っていた。
「いっつもつけるから……要らないんだとばっかり」
「うーん……。あれは癖だな。仕事では女泣かしたけど、プライベートでは泣かさないようにって一応、オレなりの配慮。でもまあ、別の意味では泣かせまくったわけだけど……」
 蓮の言葉にふたり苦笑した。
「で、奈津美は?」
「んー……。もう少しふたりを楽しみたいな。せめて結婚式と新婚旅行が終わるまで」
「分かった。それまでは我慢してやる」
「わ、偉そう」
 奈津美は蓮の顔を見て、笑った。

   *   *

 ファッションショーは内外で評価が高く、なぜかビジネスホテルなのにブライダルもすることになり、ブライダル課が設立され、奈津美がなぜか課長になった。
 あちこちの雑誌でも取り上げられ、奈津美と蓮は写真付きで紹介されたりもした。
「この雑誌の奈津美の写真、本物より2割増しかわいいな」
「う……。反論できない」
 笑顔の奈津美を左前から写した写真は、ものすごく幸せそうで……。写真の自分に嫉妬した。奈津美は自分に嫉妬する自分がおかしくて、笑った。
「だけど、なんかおかしくない?」
 蓮は課長補佐らしい。
「おかしくないよ。奈津美のがんばりが認められたんだろ、小林課長」
「課長補佐、いいの? 仕事休んで」
「だから、オレは奈津美が最優先」
 蓮の言葉に奈津美は呆れた。


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